AI APIのキャッシュ割引を172モデルで比較|中央値85%引き、最大は99%引きだった
この記事の要点
- キャッシュ単価が公開されている172モデルすべてに割引があり、中央値は85%引き
- 大手3社は横並びで90%引き。DeepSeek V4 Pro は99%引きと突出
- 10万トークンの前置きを1000回送ると、Claude Sonnet 4.6 で約4万3千円の差
- キャッシュを効かせるほうが、安いモデルへの乗り換えより効く場面がある
AI APIの請求額を下げる方法として「プロンプトキャッシュを使え」とはよく言われます。ですが、実際にどのモデルがどれだけ安くなるのかを並べた資料は見当たりません。
そこで326モデルの料金データから、キャッシュ読取の単価が公開されている172モデルについて割引率を集計しました。結論から言うと、割引率の中央値は85%引き、最大は99%引きという結果でした。モデル選びと同じくらい、キャッシュを使うかどうかが請求額を左右します。
前提:プロンプトキャッシュとは
同じ内容を繰り返し送る場合に、2回目以降を安く処理してもらう仕組みです。
典型的なのは、長いシステムプロンプト、社内規程やマニュアルなどの参照資料、コードベースの説明といった毎回同じ前置きです。会話のたびにこれを送り直すと、そのぶん入力トークンとして課金されます。キャッシュが効くと、この部分が「キャッシュ読取」という別の単価で計算されます。
集計方法
- データ取得日: 2026年8月3日
- 取得元: OpenRouterの公開API(
/api/v1/models) - 対象: エイリアスを除く326モデルのうち、キャッシュ読取の単価が公開されている172モデル(全体の53%)
- 割引率 = 1 −(キャッシュ読取の単価 ÷ 入力単価)
- 単価はすべて100万トークンあたりのUSD建て
結果
| キャッシュ単価が公開されているモデル | 172 / 326(53%) |
| 割引率の中央値 | 85% |
| 90%以上引きのモデル | 80モデル |
| 最大の割引率 | 99%(DeepSeek V4 Pro) |
割引が無いモデルは1つもありませんでした。 キャッシュ単価が公開されている172モデルは、すべて入力単価より安く設定されています。
主要モデルの割引率
| モデル | 入力 /1M | キャッシュ読取 /1M | 割引率 |
|---|---|---|---|
| DeepSeek: DeepSeek V4 Pro | $0.435 | $0.003625 | 99% |
| Anthropic: Claude Opus 4.7 | $5 | $0.5 | 90% |
| Anthropic: Claude Sonnet 4.6 | $3 | $0.3 | 90% |
| OpenAI: GPT-5.5 | $5 | $0.5 | 90% |
| Google: Gemini 3.6 Flash | $1.5 | $0.15 | 90% |
大手3社(OpenAI・Anthropic・Google)はきれいに90%引きで揃っています。一方、中国勢の一部はさらに踏み込んでおり、DeepSeek V4 Proは99%引き、Xiaomi MiMo-V2.5-Proも99%引きでした。
いくら変わるのか
10万トークンのシステムプロンプト(原稿用紙にして約250枚ぶん)を、1000回送る場合で計算します。
| モデル | キャッシュなし | キャッシュあり | 差額 |
|---|---|---|---|
| Claude Sonnet 4.6 | $300.00 | $30.00 | $270.00 |
| DeepSeek V4 Pro | $43.50 | $0.36 | $43.14 |
Claude Sonnet 4.6 で 月270ドル、日本円にして約4万3千円の差です。使い方を変えず、キャッシュを効かせるだけで生まれる差になります。
ここで注意したいのは、この差は「安いモデルに乗り換える」判断より大きくなりうるということです。上の例では、Sonnet 4.6 にキャッシュを効かせた $30 は、キャッシュなしの DeepSeek V4 Pro の $43.50 より安くなっています。モデルを変えずにキャッシュを入れるほうが、乗り換えより効く場面がある。
注意すべき点
見落としやすい落とし穴があります。
1. キャッシュ「書き込み」に料金がかかる場合がある
多くの提供元では、キャッシュを作る最初の1回に入力単価より高い料金がかかります。同じ前置きを数回しか使わないなら、かえって高くつく可能性があります。この記事で集計したのは読取側の単価です。
2. キャッシュには有効期限がある
一般に数分程度で失効し、期限を延ばすには追加料金がかかることがあります。散発的なアクセスでは効きません。
3. 前置きが完全に一致している必要がある
多くの実装は前方一致で判定します。前置きの冒頭に日時や乱数を入れると、毎回キャッシュが外れます。動的な要素は後ろに置くのが鉄則です。
4. 半数近くのモデルはキャッシュ単価を公開していない
326モデル中154モデルは、キャッシュ読取の単価が取得できませんでした。仕組み自体が無いのか、単に公開されていないのかは、このデータからは判別できません。
結論
- キャッシュ単価が公開されている172モデルすべてに割引があり、中央値は85%引き
- 大手3社は90%引きで横並び。DeepSeek V4 Pro は99%引きと突出
- 10万トークンの前置きを1000回送る条件では、Claude Sonnet 4.6 で約4万3千円の差
- キャッシュを効かせるほうが、安いモデルへの乗り換えより効く場面がある
- ただし書き込み料金・有効期限・前方一致という3つの落とし穴がある
各モデルのキャッシュ読取単価はAI料金比較表の「キャッシュ読取」列で毎日更新しています。
料金は頻繁に変わります。契約前には必ず各提供元の公式ページでご確認ください。