中国製AIモデルと欧米モデルの価格差は、入力より出力で大きい — 304モデルを実測
この記事の要点
- 中国製と欧米3社の価格差は入力で5.8倍、出力で9.1倍(中央値)
- 出力側の差が大きいのは、欧米勢が出力を入力の5〜8倍に設定しているのに対し中国勢は2〜4倍のため
- ただし同じコンテキスト長帯どうしなら差は3倍程度まで縮む
「中国製のAIモデルは安い」とはよく言われますが、どこがどれだけ安いのかを数字で見た記事はあまり見かけません。
そこで、OpenRouterが公開している全モデルの料金データを取得し、304件の有料モデルについて集計しました。結果、価格差は入力側より出力側で大きく開いていることが分かりました。
集計方法
- データ取得日: 2026年8月3日
- 取得元: OpenRouterの公開API(
/api/v1/models) - 対象: 取得できた337モデルのうち、エイリアス(
-latest等の別名)を除き、入力単価が0より大きい304モデル - 中国勢の定義: モデルIDの名前空間が
deepseek/qwen/moonshotai/z-ai/minimax/baidu/tencent/thudmなどのもの(95モデル) - 欧米勢の定義:
openai/anthropic/googleの3社(102モデル) - 単価はすべて100万トークンあたりのUSD建て
- 外れ値の影響を避けるため、平均値ではなく中央値で比較
結果
| 中国勢(95モデル) | 欧米3社(102モデル) | 差 | |
|---|---|---|---|
| 入力単価の中央値 | $0.260 | $1.500 | 5.8倍 |
| 出力単価の中央値 | $1.100 | $10.000 | 9.1倍 |
入力で5.8倍、出力で9.1倍。出力側の差のほうが明確に大きいという結果になりました。
なぜ出力側で差が開くのか
断定はできませんが、価格表の構造を見ると理由の見当はつきます。
欧米3社は入力に対して出力を5〜8倍に設定しているモデルが多いのに対し、中国勢は2〜4倍に収めているものが目立ちます。実際、上位価格帯を並べるとこうなります。
| モデル | 入力 | 出力 | 出力/入力 |
|---|---|---|---|
| OpenAI: o1-pro | $150 | $600 | 4.0倍 |
| OpenAI: GPT-5.5 Pro | $30 | $180 | 6.0倍 |
| Anthropic: Claude Opus 4.7 (Fast) | $30 | $150 | 5.0倍 |
| Anthropic: Claude Opus 4.1 | $15 | $75 | 5.0倍 |
| DeepSeek: DeepSeek V4 Flash 0731 | $0.09 | $0.18 | 2.0倍 |
| Qwen: Qwen3.7 Flash | $0.03 | $0.13 | 4.3倍 |
これが実務上どう効くかというと、長い応答を大量に生成する用途ほど差が拡大するということです。要約や分類のように入力が長く出力が短いタスクでは5.8倍の差ですが、コード生成や記事執筆のように出力が長いタスクでは9倍側の差に近づきます。
同じ条件で比べる:100万トークン級のコンテキスト
モデル全体の中央値だけでは、性能帯の違いが混ざります。そこで条件を揃えて、コンテキスト長100万トークン以上のモデルだけを安い順に並べました。
| モデル | 入力 | 出力 | コンテキスト長 | 提供元 |
|---|---|---|---|---|
| Qwen: Qwen3.7 Flash | $0.03 | $0.13 | 1.00M | 中国 |
| Qwen: Qwen3.5-Flash | $0.065 | $0.26 | 1.00M | 中国 |
| NVIDIA: Nemotron 3 Super | $0.085 | $0.40 | 1.00M | 米国 |
| DeepSeek: DeepSeek V4 Flash 0731 | $0.09 | $0.18 | 1.05M | 中国 |
| Google: Gemini 2.5 Flash Lite | $0.10 | $0.40 | 1.05M | 米国 |
| OpenAI: GPT-4.1 Nano | $0.10 | $0.40 | 1.05M | 米国 |
最安のQwen3.7 Flashと、同じコンテキスト帯のGemini 2.5 Flash Liteを比べると、入力で3.3倍、出力で3.1倍の差です。全体の中央値ほどの開き(5.8倍・9.1倍)にはなりません。
つまり、中央値の差には「中国勢のほうが低価格帯のモデルを多く出している」というラインナップ構成の違いも含まれています。同じ性能帯どうしなら差は3倍程度、というのがこのデータから言えることです。
この数字の限界
正直に書いておきます。
- これはラインナップの中央値であって、実際の支出の比率ではありません。 各モデルが実際にどれだけ使われているかは重み付けしていません。
- 性能を測っていません。 安いモデルが同じタスクをこなせるかは、この集計とは別の問題です。単価が1/10でも、必要な出力トークン数が3倍になれば実コストの差は縮まります。
- OpenRouter経由の価格です。 各社と直接契約した場合の価格や、バッチ処理・キャッシュ適用時の価格とは異なります。
- 分類は名前空間ベースの機械的なものです。多国籍な開発体制のモデルは正確に分類できていない可能性があります。
結論
- 中国製モデルと欧米3社の価格差は、入力で5.8倍、出力で9.1倍(2026-08-03時点・中央値)
- 出力側の差が大きいのは、欧米勢が出力を入力の5〜8倍に設定しているのに対し、中国勢は2〜4倍に収めているため
- ただし同じコンテキスト長帯どうしで比べると差は3倍程度まで縮む。中央値の開きにはラインナップ構成の違いが含まれる
料金は頻繁に変わります。最新の数字はAI料金比較表で毎日更新しています。